
小児実習で川崎病の児を受け持つことになったけど、看護過程の展開、どうしよう~!



川崎病。国試に出たけれど、もう忘れちゃったな。
なんだか大変そうな疾患っていうのはわかるんだけど。
看護学生や看護師であれば、だれもが一度は「川崎病」という疾患名を耳にしたことがあるでしょう。
今回は、小児看護師歴8年目、そしてのべ50人以上の川崎病患児を担当したことのあるたまごが、川崎病の看護のポイントや、看護問題の優先順位のつけかたについて解説します。



川崎病の看護について、どこよりも詳しく解説します!
小児看護実習で困っている学生や、新人看護師はこの記事を読めば川崎病看護について理解できます。
記事最後には、川崎病の標準看護計画ものせていますので、記録物の参考としてもぜひご活用ください。
川崎病とは?
まず、川崎病について、簡単におさらいしておきましょう。
病態
川崎病は、全身の血管炎。好発年齢は、4歳以下の乳幼児。
冠動脈にも炎症が及んだ場合、冠動脈の拡張や冠動脈瘤が形成されるリスクがあります。
原因は未だ不明ですが、ウイルス感染や細菌感染、遺伝的要因などが影響し合って発症する可能性が高いと考えられています。
症状
- 5日以上続く発熱
- 眼瞼結膜の充血
- 口唇発赤
- いちご舌
- BCG接種部位の発赤
- 不定形発疹
- 頸部リンパ節腫脹
- 四肢末端の硬性浮腫
- 膜様落屑(回復期)


いろいろな症状がありますが、全て血管炎による症状です。
「赤くなる」「腫れる」といった、炎症の症状が出現することを覚えておきましょう。
検査
- 血液検査
- 心エコー
必要に応じて、胸部レントゲン撮影がおこなわれることもあります。
採血は炎症の評価目的で、心エコーは冠動脈病変の確認目的でおこなわれます。
血液検査結果で注目すべき項目はたくさんありますが、最低でも次のものはチェックしましょう。
CRP上昇、白血球増多、赤沈亢進、肝酵素増多、低ナトリウム血症、低アルブミン血症
治療
川崎病の急性期には、入院管理が必須です。
炎症を鎮めるための治療を行い、冠動脈病変を発生させないことが第一目標です。



川崎病はを「火事」にたとえるとわかりやすいです。
治療の基本は、「消火」です。
具体的には次のような治療をおこないます。
- 免疫グロブリン大量投与
- アスピリン内服(肝機能障害がある場合にはフロベン)
- +
- 脱水補正
この治療をおこなっても効果が思わしくない場合には、ステロイドや免疫抑制剤の投与、血漿交換などが検討されます。
川崎病の看護問題は?優先順位を考えよう!





川崎病については理解できたけれど、看護はどうしたらいいのかな。
いよいよ、ここからは川崎病の看護について解説していきます。
- 急性期症状による全身の苦痛がある
- 冠動脈拡張・冠動脈瘤形成のリスクがある
- アスピリンによる副作用のリスクがある
- 急性期症状により栄養状態が悪化するリスクがある
- 栄養状態低下・清潔保持困難による皮膚損傷のリスクがある
- 患児にストレスが生じる可能性がある
- 家族に不安やストレスが生じる可能性がある
もちろん、患児一人ひとりの病態によっても看護問題は異なりますが、標準的なものをまとめてみました。
看護問題では、「命に関わる重大なもの」「苦痛が大きいもの」の方が優先順位が高くなります。
だいたいのケースの場合、上記のような順になることでしょう。
冠動脈拡張や冠動脈瘤が発生した場合には、1.と2.の優先順位が入れ替わる可能性があります。
川崎病の看護のポイント



川崎病では、急性期~回復期にわたり10日間~14日間程度の入院が必要です。
病期によって、看護のポイントが異なります。
急性期
患児は、発熱や症状、そして入院へのストレスにより、とにかく機嫌が悪く、ぐったりとしていますので、心身への負担を最小限とできるようにすることがポイントです。
治療に必要な投薬や管理を正しくおこなうとともに、患児・家族の思いに耳を傾け、不安を一つひとつ解消できるよう、関係づくりもおこないましょう。
回復期
熱が下がった頃には、症状も徐々に落ち着いてきます。
活動量が増え機嫌も改善してくるころですが、活動を拡大するうえで、ベッド上安静による筋力低下や、転倒・転落に注意が必要です。
アスピリンを内服しているため、出血させるようなことのないように、関わり方や指導方法を工夫しましょう。
退院期
川崎病は、退院後にも内服治療と通院が必要な疾患です。
自宅でも忘れずに服薬ができるよう指導し、生活する上で注意すべきことを正しく指導しましょう。
川崎病の標準看護計画


看護のポイントを踏まえ、川崎病の標準看護計画をまとめていきます。
急性期症状による全身の苦痛がある



高熱の持続、全身の炎症。患児は辛い思いをしています。
できる限り苦痛を取り除いてあげることがポイント!
<長期>発熱や疼痛による苦痛が緩和する
<短期>患児の啼泣や苦悶様表情が消失する
O-Plan
バイタルサイン、主症状の有無と程度(眼瞼結膜充血、口唇発赤、頸部リンパ節腫脹、不定形発疹、硬性浮腫)、活気、機嫌、発汗の有無、排尿・排便回数、性状、点滴刺入部の腫脹・発赤・硬結の有無
バイタルサインや症状の変動を観察し、増悪があった場合には、炎症の進行が考えられます。
また、点滴が漏れてしまっていては、治療がすすまないだけでなく、刺入部周囲に炎症が起きてしまいます。
これらの場合には、ただちに医師へ報告しましょう。
T-Plan
- 積極的に解熱を図る
- 薬剤投与を確実におこなう
- 安楽に休めるよう環境を整える
積極的に解熱を図る→冷罨法、衣服の調節、室温の調節、解熱剤の使用
高熱が何日も続いたら、大人でもしんどいですよね。解熱のための援助をおこないましょう。
冷罨法は、頭部・腋窩・大腿・鼠径部などの大きな血管を冷やしましょう。効率的に解熱を図れます。
薬剤投与を確実におこなう→点滴管理、内服介助
炎症を鎮めるための薬を、確実に投与することが重要です。



血管炎が起きていること+小児ということで、点滴がかなり漏れやすい状態となっていることを覚えておきましょう。
患児が点滴を気にする様子があれば、カバーなどで見えなくするのもおすすめ。
かわいい絵を描いてあげてもいいですね。
点滴と同様、アスピリンの内服も重要なのですが、内服を嫌がるこどもは本当に多いです。
しかし、アスピリンは少なくとも数カ月、退院後も飲み続けなければならないため、できるだけ患児に負担が少ない方法をみつけてあげましょう。



どんな方法を試しても内服できなかった患児が、アイスクリームで成功する例をたくさん見てきました。
3~4歳の患児が、粉薬→錠剤に変更したことで飲めたこともありました。
こどもの内服方法についてわかりやすくまとめてある記事がありましたので、こちらも参考にしてみてください。
安楽に休めるよう環境を整える
さまざまな苦痛症状により安楽が阻害されていまいやすいため、室温や明かりの調整や訪室のタイミングの工夫、刺激を減らすなどして、患児が休みやすい環境を整えましょう。
E-Plan
患児・家族に指導したい項目は、次のとおりです。
治療の必要性、解熱方法、ベッド上でできる遊びの提案
特に、点滴や内服の重要性や必要性については正しく理解してもらう必要があります。
患児の発達に合わせて、そして家族にもきちんと指導しましょう。
冠動脈拡張・冠動脈瘤形成のリスクがある





川崎病の最も重大な合併症、「冠動脈拡張・冠動脈瘤」。
異常の早期発見が重要です。
<長期>冠動脈病変が発生しない
<短期>異常が早期に発見され、適切な治療を受けられる
O-Plan
不整脈の有無、心雑音の有無、啼泣の程度、チアノーゼ、血圧低下、嘔吐、下痢などの心不全症状、IN-OUTバランス
呼吸困難感、呼吸音、機嫌、活気、顔色、血液・尿などの検査データ
冠動脈病変が発生する場合は、発症1~5病日目ごろから炎症が始まり、10病日目を過ぎたころから冠動脈瘤が発見されます。
この時期には、特に注意して症状の観察をおこないましょう。
T-Plan
心電図モニタのチェック、心音の聴診
川崎病急性期の場合には、心電図モニタを装着していることが多いです。
脈拍数の変動や異常波形の有無について観察が必要。異常が認められたら、すぐに医師へ報告しましょう。



心電図が嫌で、電極を外してしまう患児が多いです。
モニタに異常がみられた場合は、すぐに再装着しにいきましょう。
すぐに取れてしまう場合には、上から医療用テープで補強することをおすすめします。
薬剤を確実に投与する
こちらは、「全身の炎症による苦痛がある」のT-Planにもあげました。
冠動脈病変は、全身の炎症を早期に抑え込むことで、防げる可能性が高まります。薬剤投与は確実に。
E-Plan
主に、心電図モニタの必要性について指導しましょう。
アスピリンによる副作用のリスクがある


出血傾向に注意!
川崎病治療で欠かせないのが、アスピリンの内服。



副作用のなかでも、出血傾向には注意が必要です。
特に、安静度を拡大し活動量が増えてくる頃が要注意。
転倒・転落を防止する方法を考えてみましょう。
O-Plan
服薬状況、アスピリンの副作用の出現の有無と程度、活動量、口唇亀裂の有無と程度、BCG接種部位の発赤の有無と程度、療養環境
T-Plan
- 採血など出血を伴う処置の後には十分に止血をおこなう
- ベッド柵を最上部まで上げる
E-Plan
- 患児・家族に易出血性について指導する
- 歩行時は大人と手をつなぎゆっくりと歩くよう指導する
- ベッド柵を最上部まで上げるよう指導する
- 口唇の皮やBCGの痂疲をめくらないよう指導する
急性期症状により栄養状態が悪化するリスクがある





発熱、口腔内の痛み、頸部リンパ節腫脹などによって、
食事摂取量が低下しがちです。
栄養摂取不足は、体の回復のみならず、発達が遅延する可能性があるため、注意が必要です。
<長期>適切な栄養状態を維持できる
<短期>1日に3回、食事(好きなものでも可)を摂取できる
O-Plan
頸部リンパ節腫脹の有無と程度、咽頭発赤の有無と程度、いちご舌の有無と程度食欲、食事摂取量、IN-OUTバランス、体重の変化、脱水症状の有無と程度、機嫌、活気、表情、言動など
患児の栄養摂取を阻害している要因を考えましょう。



いちご舌や咽頭発赤により食事摂取を拒否する患児もいます。
いちご舌を確認する際は、「あっかんべ~してね」というと
お口の中を見せてくれる患児が多いです。
T-Plan
- 病院食は、必要に応じて形態を工夫する(きざみ食、ひと口大など)
- 患児の好きなものを摂取してもらう
- 消化が良く口当たりの良いものを摂取してもらう
- 高カロリーの飲み物を摂取してもらう



冷たくさっぱりとしたものを好む患児が多いです。
ゼリーやアイスクリーム、ジュースなど、患児の好きなものを
持参してもらいましょう。
E-Plan
- 栄養摂取の重要性を説明する
- 好きなものだけでも良いので、与えるよう説明する
- 少量を数回に分けて食べさせるように指導する
栄養状態低下・清潔保持困難による皮膚損傷のリスクがある





急性期は入浴ができません。
加えて高熱による発汗もあるため、皮膚状態が悪化しがちです。
<長期>患児が感染の兆候を示さない
<短期>毎日、清拭または入浴ができる
O-Plan
バイタルサイン、発汗の程度、皮膚粘膜の症状、掻痒感の有無と程度、皮膚の汚染状況、膜様落屑の有無と程度
T-Plan
- 毎日、清拭もしくは入浴をおこなう
- 口腔ケアをおこなう
- 発汗時にはこまめに衣類をかえる
- 口唇の発赤や亀裂がある場合は、ワセリンやリップクリームなどで保護する
- 点滴固定テープは2日に1回貼りかえる
- 心電図モニタの装着部位は毎日かえる
全身の清潔を保持する



急性期は、苦痛や機嫌の悪さから清拭を嫌がる患児もいますが、
保護者の協力を得て、できるだけ短時間で、苦痛を少なくできるよう、
ケアの方法を工夫しましょう。
E-Plan
- 清潔保持の必要性を指導する
- 感染予防について指導する
患児にストレスが生じる可能性がある



体のしんどさに加え、知らない医療者に囲まれたり、痛いことをされたり。患児のストレスは計り知れません。
<長期>病棟内で、年齢相応の活動ができる
<短期>安静度を守って遊ぶことができ、笑顔がみられる
O-Plan
機嫌、活気、1日の過ごし方、好きな遊び、活動量、安静度を守れているか、言動、表情
T-Plan
- 安静度内でできる遊びを提案する
- 診察や検査など、頑張った後にはしっかりと褒める
- 検査や処置などを行う際は、患児の発達段階に合わせてきちんと説明をおこなう
- 家族との時間を確保する



可能であれば、保育士に介入を依頼するのも良いでしょう。
家族には、患児が好きなおもちゃや絵本などを持ってきてもらうと良いでしょう。
E-Plan
- 安静の必要性を指導する
- 家族に、入院や治療、検査などへの協力を促す



急性期を脱したら、徐々に入院前の生活に戻していきます。
成長・発達を阻害しないためにも、自分でできることはやってもらいましょう。
家族に不安やストレスが生じる可能性がある



患児と同様、家族の不安やストレスへのケアも忘れてはなりません。
小児看護では、常に家族看護の視点を持ちましょう。
O-Plan
家族の言動、表情、患児への接し方、治療に対する理解度、付き添い状況、きょうだいの状況、休息状況
T-Plan
- 家族が不安や疑問を表出しやすい環境をつくる
- 医師からの説明に同席し、家族の理解度を確認する
- 必要に応じて、医師に説明を依頼する
- 検査や処置、治療などについては、内容と時間をあらかじめ具体的に伝えておく
- 家族が休める環境をつくる



付き添いをしている場合、患児が寝られないと家族も寝られません。
疲労が溜まりやすいため、家族への配慮を忘れないようにしましょう。
関係づくりが大切ですね。
E-Plan
- 安静度について正しく説明する
- 家族の理解度に応じて、医師からの説明や指導を追加する
川崎病は、病期に合わせた介入が必要。ポイントを抑えて看護しよう!


今回は、「川崎病」について、看護のポイントや標準看護計画を、川崎病患児を50名以上担当したことのある看護師たまごが経験を織り交ぜながら解説しました。
川崎病では、急性期・回復期・退院期で、看護のポイントが異なります。
患児の入院生活における苦痛やストレスが少しでも軽減できるよう、個別性に合わせた介入方法を検討してみて下さいね。
参考文献:「発達段階からみた小児看護過程」第3版 医学書院
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